綴虚堂の日々

ヲタの日常

映画 刀剣乱舞

ネタバレ含みます。嫌な方は避けてください。
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とりあえず、検索とかで最初の数行表示されるのを避けるために、映画.comのレビューに投稿した内容を。

満点とは言いません。合う合わないもあるでしょう。けれど実写化物によくある「見る時間がムダ」の作品とは一線を画しています。見た上で良し悪しを論じる価値が充分にある作品です。
先行作品である舞台版・ミュージカル版ではかつて物であった彼らが心というものに困惑しつつも戦いの中で成長していくというのを主眼にしていますが、映画版ではあくまでも歴史を守る戦いという部分に注力しています。
なので、人によっては少々物足りなさを感じるかもしれません。
けれど、メインテーマを絞ったからこそ刀剣乱舞を知らない層でも楽しんでもらえる作品になっているし、知っている層は知っている層で深く考えをめぐらせるとじわじわと味がしみだしてくるような楽しみ方ができる良作だと思います。

「映画刀剣乱舞」本予告 - YouTube

ということで、ここから後は容赦なくバレ有りの感想を。

正直なところ、一回目から全体通して物語に没入できたかというとNoです。
でも、実写化でちゃんと「楽しめる」作品を作ってくれたことには感謝しかないし、次があるならその作品も期待したいと思える出来でした。
更にはとうらぶミリしら勢からの評判もまずまずの様子で、これからは人に薦めるのにこれよさげだなとも。

二回目に見ると、一回目にひっかかってたところが気にならなくなる出来というのが本当に惜しいと思います。
「一回ではわからない」と「二回目以降に新発見がある」のとは違うのですよ…。
私が気になったのは、秀吉が転げながら嘆いた後空を写す場面です。伏線になっていることは初見でもわかるんですが、ちょっとテンポ悪く見えるというか。
でも本当、そんな細かい部分を嘆くくらいには、他の部分の出来がよいのです。
舞台一作目と同じ題材、8振の男士のうち5振が同一であるにもかかわらず、これは別の本丸の、全く別の物語だということがするっと入ってくる仕上がりでした。

冒頭は、ものすごく戦隊っぽいなーと思いました
開始時点で既にチームが出来上がってるタイプでの第一話冒頭風。
特撮式の一人(ないし二人)だけにスポットを当てる方式は、ステやミュの各キャラにある程度掘り下げがある形式に慣れた後だとちょっと寂しい感じもあるんですが、こちらも初見の方にもわかりやすくするにはよい方法ですよね。
(今回は三日月回という感じだったので、ぜひ次回別キャラ回を…!)

三日月さんの老成ぶりがすごい。
見た目はわかい美人さんなのに「じじいだ」という自称がとてもしっくりくるのとても不思議な感覚。
これまでの2.5ちかズの中で一番じじい味があった気がします。

本能寺に遡行軍が現れたとき、誰何はしても化け物とは言わないんですよね。
で、よくよく考えてみたら、あいつらの格好って戦場だとすっごい普通なんですよね…
ドラマではあんまり使わないけど、鎧のフル装備なら顔を守るものありますし。(鳴狐が下半分だけ付けてるあれ…)
白いもじゃもじゃの髪だって、ああいうのついてる兜って珍しくないですし。
状況としては、謎の黒揃えの軍勢が現れた、ってだけですよね多分。

戻ってからのお茶タイム、戦装束の武装オフ姿がすごく好き。
「得意のごまかしか」「いや、下手すぎる」という短いやり取りが、本丸で重ねた時間を感じさせるのもすごく好きです。

場面変わって…日本号、なんで一人だけ内番服ですらないスウェット姿…似合うけど…本当にどうしたの…w
違和感がなさすぎて…w
この付近の不動、三日月、審神者の台詞が二回目に見ると意味が変わって聞こえるのとても面白かったです。

信長が生きてることが知られたら歴史が変わっちゃうってあせる長谷部が可愛らしくも気の毒なので、それだけじゃ変わらないから安心してって誰か教えてあげて…
本能寺の変の後「信長様もご子息も無事だと聞いています」って内容の秀吉文書があるんです。梅林寺文書とかいうやつ。本編見るまで、その文書が真実語って文書になるんかなーとか思ってました。)

光秀を追い詰めたときの短刀アップのミスリードは引っかかっちゃいました。
動体視力ないので、彫物があることしか見えなかったんですよ…。
お馬さん、光ったところから出てきたということは本丸のお馬さんなのかな?
かさばらずに置いておけるならとても便利…。

日本号の熊毛鞘、思っていた以上にモップですね…w
上にぼてっと乗っかるハトがとてもかわいい…。
そしてハトを見て「山姥切の」ってなってるってことは、あの本丸の山姥切はあれを何度かやってるってことなんでしょうか…

この本丸の長谷部、疑うことを知らない感じのピュアさ加減がかわいいと思います。
軍師の家の刀というより、家宝の箱入り御刀様って感じ?
だからこそ、秀吉豹変時の悲痛な叫びが痛々しい…。
あの秀吉はとても怖かった…豹変といっても前の場面から完全に連続しているのに別物感があるのがすごい…
(ところで、尻の模様を知ってるとかいう話になったところで、まさか念友だったんですかって思ったのは私だけではないと思いたいw)

みんなが「信長の刀が丁子っぽい」って言ってたの確かに…。
安土城で三日月に向けたときによく見えますよね。

三日月が、信長と相対している間ずっと表情フラットなのが、とてもよかったです。
自分に刀が向けられても、守りたいものとして視線を向ける骨喰に刀が向けられてもそれがかわらないのがとてもいいなと。
人の姿をしていたとしてもあくまで「モノ」なのだという感じがして。

他のメンバーを本丸に送り出したところからの三日月がやさしい顔から真剣な顔へ、更にはこれで最期なのだと少しゆるむところまでの流れが本当にすごかったです。
その後の流れは若干唐突な感じもありましたが、ここは多分アクションを楽しむパートですよね。
あのピンクの回復&桜付けアイテム実装してほしい…

ドロップした江君、こんな逸話がある子です。
iiwarui.blog90.fc2.com
川角太閤記なので歴史扱いしちゃいけない逸話という認識でよいと思いますが、そりゃあんな役割負わされたら怒りますわね…。

男士たちがそろって礼をする場面はぞくっと来ました。
ちなみに私は、新たな審神者が子供であることを問題視していない組です。
実際問題として、大人であっても戦いを指揮する訓練を受けていない・惣領としての教育を受けていない人間ならあの子供とやれることに差はないわけで。
子供が当主になって家臣が盛り立てる構図なんて歴史の上で珍しくないので、きっと男士達は違和感持たないと思いますし。


本編前の映画泥棒との特別コラボ、とてもかわいかったです、


普段のCMとほとんど同じことをやっているだけなんですけど…
ナレーションは三日月担当でした
一週目は、ポップコーンたちの代わりに甘酒を持った不動、パトランプの代わりにあのポーズかつ満面の笑みを浮かべた鶯丸…
確保後にお部屋の場面に変わって、違法DLしているのは遡行軍…操作している画面の内容も今回仕様で…そして懲役や罰金というナレーションが入っているのに長谷部にぶったぎられて…
…だれか長谷部に「情報を盗むやつ」とでも説明したのかな?間者と見なしたのかな??
で、その後の場面で、どうにか鶯丸から逃れて逃げていくカメラ男。劇場内での飲食物は売店で買うように言う不動。
二週目も流れは同じで、男士が入れ替わる感じでした。
お団子を食べる骨喰、カメラ男を捕まえる日本号、遡行軍を切る薬研。
三週目はどうなるんでしょうね…?


河原のシーンに至るまでとかピンクの小瓶とかについて多少補完されているということで、小説版購入しました。

…開いて、ひょっとして間違えてジュニア文庫のほう買っちゃったかな?と思いました(ちゃんと普通の方買ってました)
文章読みなれていない方でも比較的読みやすいと思います。逆に読みなれていると、違和感感じるかも。


これを機に歴史方面をあさってみたいなという方もいるかと思いますが、正直今回登場する歴史人物は、有名すぎるが故に調べるノイズが多くてですね…
うっかりするとリアルな意味での歴史修正主義者に惑わされますのでご注意ください。
歴史修正主義者の本来の意味、捏造した都合のよいお話を本当の歴史だ、と言うような人たちのことです。某明智氏とか物語としてなら面白いって言えるんですが歴史と言われると全力ではねのけるしかないという…)

信長については、すずき孔 著、柴 裕之 監修の『マンガで読む 新研究 織田信長』が、ガチな歴クラさんたちの評判もよく、学習漫画くらいの難易度で最近の研究成果をさらっとおさえられます。

秀吉は…万人向けにおすすめできる本があれば私が教えてほしいです。
とりあえず堀 新・井上 泰至編集の『秀吉の虚像と実像』は、秀吉について事実を歴史研究方面から、俗伝を文学研究方面から追いかけた面白い本でした。
自分で買うのはなんだなあとなった場合はぜひ図書館に購入希望を出してください。専門書って薄い本と同じくらいしか刷ってないこともあるので、図書館による購入も充分著者・出版社の助けになりますので。
(本当はもう一段難易度とお値段が低い本をおすすめしたい…)

ちなみによく豆知識的に、信長は秀吉をサルではなくハゲネズミと呼んだという話が語られますが、この本を読むとどうやらその「ハゲネズミ」の元ネタの書状については専門家の間でも真贋の意見が分かれているようだということが読み取れます。
更には「猿顔」は後世のイメージであるものの「猿のようだ」という人物評は同時代付近からあったようだとか…。
ハゲネズミの書状については、2017年の展覧会のときのものですけど解説がこちらに。
tokugawa-shiro.com


あと、光秀について。私は読んでないのですが、この出版社のこのシリーズなら外れないので。
柴 裕之(編著) 『図説 明智光秀
戎光祥出版の図絶シリーズは、中高の社会科教科書くらいの難易度でコアなテーマを扱っています。
ガチな歴クラさんがこの出版社の歴史本は外れないとおっしゃるので、気になるテーマのものがあったら買いなんです。
「マンガで読む」「図説」「実像に迫る」がタイトルに入っているやつなら、前提知識がなくても平気なくらいの難易度です。