映画としてのできはよくわからないのですが、大変興味深い内容でした。
2015年に永青文庫、翌年細見美術館で行われた春画展を題材とした記録映画です。
春画展にかかわった方々の思いを尊重すべく、映像中に登場する春画はモザイク処理等されていません。その代わりに18歳未満禁止という措置がとられています。
www.shungamovie.com
登場するトピックとしてはこんなところでしょうか。
- イギリスで開催された春画展の国内巡回不成立
- 江戸時代~近代における春画の扱い
- 春画と「猥褻物」。図書へ無修正の春画が載るまで
- 春画とそれ以外の美術とのかかわり
- 技術力が高い浮世絵としての春画
- かつての日本における性意識
記録映画ではあるものの、時系列に沿ったものではありません。
若干話が行きつ戻りつするのはわかりづらいなと感じました。
ただ、わかりづらいと思いつつも、元々の春画展行けばよかったとものすごく後悔したし、いろいろ考えさせられる内容だったので、得るものはあったと思います。
国内での巡回展がなかなか成立しなかった理由として、いいところまで行くと反対の声が上がる、という話。
逮捕者がでたらどうする、ことを荒立てたくない、というところからの自粛・自主規制方針は、いろいろと身につまされます。
(刀関連の危険物扱いだったり薄い本の自主規制だったり…)
図書へ無修正の春画が載るまでの流れはちょっと気になっていたんですよね。
前にメインブログに男色と丁子油という記事を書いたんですけど、そのときに参考にした資料に、以前は春画も局部の修正が必要で、結果として本に載っているのが女なのか若衆なのかわからないなんて事態が起きていたなんていう話が載っていたので…。
尽力された皆様、本当にすごいなと思いました。
登場した研究者の方々が、十年後の広がりに希望を持つコメントをしていらしたのが印象的でした。
今は種をまき、すそ野を広げるときなのだと。(意訳)
この映画は、テレビ放送も、DVD収録もできないため、見るためには映画館に行かないといけません。
公式サイトに行くと上映を行っている映画館情報があります。
普段見に行く映画館とはちょっと勝手が違う、小さな館がメインですが、挑戦してみる価値がある作品だと思います。
ちなみに春画展、インターネットミュージアムには細見美術館でのレポートが上がっています。
こちらも興味がある方はぜひ。
春画展(前期) | 取材レポート | インターネットミュージアム