綴虚堂の日々

ヲタの日常

ブックレビューアンソロ作成の裏側

当方、印刷所応援企画として、『刀剣ブックレビュー集』というアンソロジーを作成しました。
なかなか面白いものができあがったし、お求めいただいた方にも好評をいただいております。

で、当方は刀剣乱舞ユーザを主な対象層として、刀剣(実物)の本の紹介を集めたわけですけど、他のジャンルでやっても面白いと思うんですよ。
FGOユーザ向けに神話伝説本レビューとか、各種文豪系作品ファン向けに昭和期文芸作品・作品評論とか。
イベント中止による印刷所苦境は変わらず続いていますし。
とはいえ、主催をするには多少の当該ジャンル知識と、頒布のためにも当該ジャンルの知り合いがある程度いることが必要…
ということで、裏側こんな感じでした、というのを公開することで、他ジャンルでもやってみようという気になる人増えないかなという希望でもってこの記事を立てました。

①企画立案意図
まずは印刷所応援です。企画時点で事態がここまで長引くとは思いもよらなかったわけですが、あちこちで印刷所応援企画が立ち上がった時期でした。
で、応援といってもこちらのジャンル的に、本を出すには調査が必要です。
けれどこのとき、あちこちで図書館も美術館も閉鎖し、再開のめどもたっていませんでした。
手元にある資料だけを元にして、情報系の本を作る、しかも役に立つものを。
そういう方向で思いついたのがこのブックレビュー集です。

計画を思いついたのが4月頭、参加者の募集と原稿の募集がどちらも4月末まで。
5月の連休で構成を終えて、すぐに出してしまうという計画でした。
(実際、タイミングのよいエアブーがあったので、発行は少しだけ送らせましたが、着手~発行まで一月半の計画でした)

②対象層の決定と頒布計画想定
対象層として想定したのは、刀の実物に興味を持ちつつ、どこから資料を探してよいのかわからない、という層です。
このブックレビュー集は長期間ですこしずつ頒布する前提で考えていましたので、気軽に手にとってもらうためにも、頒布価格は500円というのを真っ先に決定しました。
(当方、計算の煩雑さを防ぐため、イベントでの頒布価格は500円単位にしています。)
委託に出すときの価格は200円前後を乗せているので、そこから一冊売れたときのこちらの取り分を計算すると450円です。
boothは当方、イベント価格と同等で出しているのでもう少し金額は大きくなる…といいつつ、梱包費を差し引くと大体こちらも450円くらいになります。

ページ数は、足りなければ主催が埋める前提で、ミニマム30p、マックス70pを想定。
印刷費は仮に5万円強を予定しました。ページ数が少なければ少量ずつ異なる仕様で違う印刷所に出すかちょっとお高めのところにして、ページ数が多くなったら一括で安いところに出すということで。
関係者宛の献本を30部と仮定すると、その梱包と発送費用が7500円ほど。
ということで、経費の見積もりは約6万となりました。

約6万の経費を、一冊450円の頒布価格で回収するとなると、133冊が必要になります。
まあ、すぐには無理でも、一年くらいかけたらいけるんじゃない?ということで、上記133冊+関係者30冊+もうちょい=200冊というのが、当初の印刷計画となりました。
(当方、プレゼンアンソロという情報系の本の主催もしているので、ついで需要がある程度見込めるかなと。)
まあ、イベント出店時の計画でこれだと、イベント参加経費分があるのでちょっときついのですが、計画したのはイベント中止が契機だったのと、経費回収にまわせる他の発行物の予定があったので、そこは問題ないかなと考えました。

ちなみに、この時点での委託計画は、とらのあなに100、メロンブックス(オリジナル評論扱いなのであえてメロン)に20、残りは自家でした。

なお、表紙のデザイン経費が入ってませんが、今回は外注するだけの時間も予算もないので、500円の有償素材に自分で文字を入れたものを使うことを当初から決定。
上記計画の上では誤差に近い金額なので、含めていません。

③フォーマットの決定
まずはどんな情報がほしいかを考えました。
ブックレビューなので、最低限書名、筆者名、出版年とレビュー本文は必要。
で、刀剣関連の本は、ある程度古くても参照すべきものが結構あるんですね。そして流通しているもの、流通していないけれどアクセスが容易なもの、閲覧の難易度が高い者などさまざまです。
なので、閲覧までのハードルが低いものはわかるように明記することにしました。
一つの記事の分量は、A5の半分~1ページとしました。

④原稿の募集
今回の原稿は、公募式としました。
(とはいえ、プレゼンアンソロ関係者には、よかったら書いてねの一斉お誘いをさせていただいております。)
また、上がってきた原稿は、原則的に拒否をしない方針としました。
刀剣の世界って実際的にジャンルが広いので、学ぶための本としては論外なものであっても、別の意図で使うならよい資料になるとか、本の内一部は古いけれど他はよいとか、そういうのが結構あるので、分類さえすれば受け入れできると考えたためです。

また、紹介する本の重複もありとしました。
紹介者が本のどの部分に着目するかによって、紹介文はまったく違うものになると考えたためです。

該当者への一斉DM送信にtwiplaを使い、同時に原稿を送ってもらう形にしました。
短い原稿であるため、募集にあたってはgoogleフォームを利用しました。
上がってきた回答は表形式でダウンロードできるため、それを適宜コピー&ペーストして書式を整えていきます。
f:id:waterseed-crown:20200808205055j:plain

⑤構成
正直、ここが一番大変な作業です。
紹介された本を分類して、どう配置するかを決めていきます。もちろん読んだことのない本も含まれています。
分類も、当初考えていたように分類したらバランスが悪くなってしまったりとか。
ちなみに、当初考えていた分類は「初心者向け厳選本」「すこしだけ深く」「ガチ本」でした。
それがこんな感じに。
f:id:waterseed-crown:20200808210936j:plain
一つの章の中での並び順も、内容を考えながら配置していきます。
そして、上がっている本の系統上足したほうがよいと思われる本のレビューを追加していきました。

⑥原稿の確認依頼
こちらでフォーマットした原稿を、フォーマットしたあとgoogleドライブに入れて共有し、確認していただきました。
全ページを統合したpdfと対象者の掲載ページ数を伝達しています。
また、ページ数までたどり着くのが面倒な方むけにページをjpg化したものも同様に共有しました。

⑦アンケートをとって印刷数と頒布チャネルの確定
ページ数があらかた定まったあたりで、サンプルを紹介しつつアンケートをとりました。
その結果により、印刷部数を増やすことにしました。

⑧結果
最初に書いたとおり、好評をいただいております。
印刷費と関係者費用分は回収して、さらにイベント参加に伴う経費一回分を穴埋めできるくらいになりました。


……ということで、比較的負担少なく印刷所応援になって、なおかつちゃんと役立つ本、他のジャンルでもつくりませんか?