綴虚堂の日々

ヲタの日常

新作歌舞伎 刀剣乱舞『月刀剣縁桐(つきのつるぎえにしのきりのは)』

刀剣乱舞歌舞伎見てきました!
正式タイトル 新作歌舞伎 刀剣乱舞『月刀剣縁桐(つきのつるぎえにしのきりのは)』でございます。
一応この記事は審神者仲間を想定しつつも、歌舞伎の方々が見に来てもいいように多少の補足を添えて書いていきます。

ざっくり感想

まずはざっくりとした感想を。
刀剣乱舞が歌舞伎になると聞いて期待していたものは120%叶えていただきました。ありがとうございます。
まあ、もうちょっとキャラ姿を見たかった方もいらっしゃるのだけど、それはそれ。
「歌舞伎」と「刀剣乱舞」と聞いて気になった方はぜひ見てください。配信でもいいから。
そして是非とも円盤化してほしいし、通常の各種配信にも入ってほしいですね。そのほうが人に勧めやすいので。
そしてぜひ各地で再演してほしいし、第二弾・第三弾もやってほしいです。


これを書いている人の歌舞伎鑑賞歴

それほど多くはありません。
学生時代に大学の教授に手配してもらって、建替え前の御園座では何度か見ました。たぶん五千円以下くらいの三等席だったかと。
演目はちゃんと覚えてないけれども、忍術の三すくみは見た記憶。あと何かしら本水のある演目も見たはず。
いかにもエンターテイメントという感じのものばかりだったと思います。なので歌舞伎に対しての印象は、戦国時代村のショーの延長という感じ。

あとはナウシカ歌舞伎のシネマ歌舞伎と、この間遠征ついでに歌舞伎鑑賞教室(日本振袖始)に行ってきたくらいですね。

歌舞伎のことばについては、がっつり古典演目でも台詞ならある程度平気。
ただし、節回しが付くと聞き取れなくなります。

古典の語彙理解はそこまで得意でもなく、大正・昭和初期の文語文なら問題なく読めるけども明治くらいの文章だとちょっと怪しくなる程度です。

今回の刀剣乱舞歌舞伎では、初見での配信時にストーリーは何の問題もなく追うことができました。通常の歌舞伎よりも一段簡単かなという感触。
節がついている部分についてもかなりついて行けました。でもこれは前提になっている知識部分があるからという気もします。
とはいえ現地で借りたイヤホンガイドも、歌舞伎仕様の効果音の話や所作に込められた意味の話などが聞けてよかったなーと思います。

本編感想

今回、ストーリーに必要な刀剣乱舞の設定が幕に書かれていたの、最高だなと思いました。
はい。とうらぶ側で必要な設定は、ほぼこれだけです。

歌舞伎側の方々にご説明しますと、刀剣乱舞というゲームは設定集のようなものでして、本編に登場するのは設定とわずかな掛け合い程度なのです。
(一部、長めのイベントストーリーはありましたが、今回の作品とは特に関連しません)
プレイヤーはそれぞれの本丸を拠点として歴史を守る戦いに参加する、ということで、各メディアミックス作品はそれぞれ異なる本丸での出来事を描く、独立したストーリーなのです。

更には、幕が開く前に案内人としてお二方が掛け合いの形で前説をしてくださったのもよかったです。
とうらぶを知らない従来層にとうらぶの説明を、そして歌舞伎を知らない層に向けては歌舞伎のあれこれを。
特別番組としてyoutubeに上がっていた各回をさらにすっきりさせたような内容でしたが、導入として素敵でした。
www.youtube.com
あと、この案内人さんの格好もとても素敵。
今回の歌舞伎作中で特に補足などはなかったですが、ゲーム導入時や新しいシステムがあるときの案内役である、こんのすけイメージですよね。
幕が開いてすぐ、この案内人さんたちが敵の動きについて報告しているので、やっぱりこんのすけだわーと妙な感慨が。

敵のねらいについて案内人さんのご報告があり、天の声形式で歌舞伎本丸の審神者が出撃を決めたところで、槌の音が響いて祭壇がせり上がってきたところでテンション上がりました。
ちょっと雰囲気が違うけども小鍛治のセットじゃないですか!
真ん中の刀鍛治(イヤホンガイド曰く宗近であるとのこと)が礼拝して、「わたくしの功名でなく~」というようなことを言ったのでやっぱり小鍛治だったーと。
(歌舞伎版の小鍛治は見てないのですが、能の詞書は以前読んだので…)
でも、この場面の詞は途中からアレンジしてあって、ここでできあがるのは三日月宗近でございました。

祭壇の代わりに三日月が登場して名乗りを上げて、更に他の刀剣男士も登場しての名乗り。
これ、みんなが期待していて見たかったシーンNo1じゃないかしら?
他のメディアミックスでも、キャラクター入手時の台詞&ポーズという演出があるので、歌舞伎ならなおのことやるでしょうとは思っていたのですが、想像以上に格好いい…
あと名乗り台詞の情報量、多いですね?小烏丸の「天国(あまくに)作」とか、同田貫の「肥後国住人」、髭切の異名の「鬼切」、膝丸の「蜘蛛切」。そのあたりゲーム内だと特に語られてないあたりまでかっちり補足されてるのが、こう、くるものが。

場面変わって、仮御所。
お姫様(髭切との二役)がめちゃくちゃ可愛い!
歌舞伎のお姫様って、声に違和感がありつつも所作の美しさでぶん殴ってくるものだと思ってたのですが、このお姫様は声まで可愛い…

どろどろと太鼓がなってあちこちから遡行軍が現われる場面は、目が全然足りなかったです。
次々いろんなとこから出てくるし、刀剣男士もあっちこっちから救援に来るし。
膝丸が上階に向けて「ええい」ってやってるところ、二階から見てたときにはタイミングに気づいてなくて遡行軍の様子を見逃しちゃったの惜しいことをしました。

初日配信ではたぶん映っていなかったのだけど、義輝からの勧誘場面で端に座った同田貫が小烏丸にお伺いたててたり、同田貫&膝丸がガタガタって感じで立ち上がったりとかしてるのちょっと可愛かった。

御所での祝いの宴の場面は、キャラクターごとにつけられた舞が素敵でした。
個人的には長い舞踊は飽きてしまうのですけど、このくらいなら楽しんで見られるいい具合。
この舞の場面での節回し各種も元ネタがありそうな気がするのでとても気になるところです。
(見てたときにはここも小鍛治の剣の威徳を語る場面からかなと思ってたのだけども、改めて詞書を確認したらなんか違うかもとなりまして)

ここの三日月パート、初見で「小鍛治だ」となり、でも能の謡確認して「やっぱり違うかな」って思ってたんですが…小鍛治でよかった模様。歌舞伎版だと干将莫耶について語って、そこから十握剣の話にいくみたいで。(歌舞伎の名作台本みたいなやつ見ました)
おどりの振りは、膝丸と同田貫が好きです。

異界の翁・媼によってできものに悩まされていた義輝が、祈祷で治る場面。
スムーズすぎて、ちょっとしたマジックでも見てるような気分になりますね。

松永弾正の子息が、果心居士(異界の翁)を睨み付けて、悔しそうにしながら出て行く場面の表情と仕草がとてもよかったです。
この子息、実際に存在した子息とは名前が別、なのですが、歌舞伎だしそんなこともあろうなあというくらいの認識です。だって正宗の弟子に来国俊とか村正とか設定しちゃうジャンルよ(時代が合いません)

そして血気さかんな膝丸の場面は、初見でちょっと違和感があったんですが、寿曽我対面のオマージュだと知って納得。
刀剣男士には本丸ごとの個体差があるわけで…歌舞伎本丸の源氏兄弟に曾我兄弟ミームが乗ってるのはむしろ自然かと。

三日月の裃姿は見たときびっくりしました。
でもこう、江戸時代ドレスコードの世界で裃を着てくれるなら、現代コードではきっとスーツを着てくださるわけで…!妄想広がりません?

姫様からの求愛はびっくりしました。歌舞伎か宝塚じゃなきゃ燃えるやつですわ。
初回はこの姫様にびっくりしていたら、場面が転換してそのまま義輝が同じようなこと言って口説き出す(語弊)ので更にびっくりしました。
そして初日配信のときは、映像でみたことでドラマ的に見てしまったようで気づかなかったのですが、現地で見るとこの転換がすごく美しいのです。

そして刀剣男士勢揃い。
二役組に「なぜたまにしか出てこないのだ」は笑いました。
膝丸が髭切に「行方不明になられては困る」と言ったところでも場内かなり笑いが起きてたのですが、どうやらここ、歌舞伎の民にはお約束回収になったようですね?髭切=友切丸は歌舞伎の世界では行方不明の状態から始まるものだそうで。
名前を忘れられた膝丸のへろへろ声がとっても可愛かったです。

休憩後。
義輝の鷹狩り姿でまずはテンションがあがりました。
尻毛鞘の装備状態なんて普段見れないもの!というか尻毛鞘を説明するためにすっとだせる例がFGO牛若ちゃんくらいしか思いつかないもの!
あとから気づいたんですけど、腰元さんたちの振袖も、今の着装ではないんですよね。帯を広いままつかってるし、たぶんおはしょりじゃなくて抱え帯使ってるのかなー。
こういうの見るのも楽しいですね。

すっかり暴君と化した義輝を止める三日月がとても素敵。
刀を持った義輝の部下を無手でいなして、刀を構えた義輝を目線だけで止める、その格の違いを示す演出がホントに格好いいのです。

ここからの流れは若干ご都合感もあるのですが、そこはまあ歌舞伎だしと思っております。
特に、古典みが強く出ているから、そういうものだよねという感覚が。

人間パートのメインはここからの松永弾正と妻と子の場面だと思うのですが、うまく言えないけどすごいものを見せて貰った、という感じがいたします。
嘆く妻と、最後だけ少し悲しみを見せる弾正との対比とかね。
ストーリーとして好みかと言われたらそうでもないんだけども、複数回の観劇で飽きることなく、そのたびがっつりと見たくなるというか。

ご注進、といって入ってきた髭切・膝丸のニコイチの動きがとても素敵

ここから、異界の翁・媼、わざわいの獣、(場面転換の演奏を挟んでから)義輝と、戦いの場面が続くのですが、歌舞伎らしい型を歌舞伎らしい演出で見せる場面に、歌舞伎の型なのだろうけれども現代的な音楽に合わせて見せる場面に、時代劇みたいなしっかりとした殺陣の場面に、と、戦いと一言でいっても見せ方がいろいろで、まったく飽きさせないというか、見所がつきづきお出しされるというか。
見る前は、歌舞伎だし戦いは激しさよりも美しさで見せるんだろうなと思っていたので、嬉しい驚きでした。

刀を地に突き立てて戦う剣豪将軍の図、格好いいから見たいけれどもガチ歴史ものではなかなか見れない(明確に創作なので…)わけですが、歌舞伎という媒体なら確かにやるっきゃないですよね。最高!
畳じゃなく岩山だったけども、格好いいならそれが正義!

つきものが落ちたような義輝と三日月との一騎打ち。三拍子の静かな曲に合わせたもの悲しい殺陣と、本当にラストのつけでの効果音との対比がとても素敵でした。

そんなわけで、大満足でございます。
私は普段の観劇で連続して見ても飽きない限界が3回くらいなのですけども、これはまだいただける感じが。

そりゃあ小狐丸の活躍とかはもっと見たかったですよ。
でもはじめに書いたとおり、それはそれ、これはこれなのです。

刀剣乱舞のファン側から見たときには今回のキャラクター選定は、ストーリーに対して必然性があまりないように見えます。
登場する全てのキャラクターについて、別のキャラクターでも代替可能に見えるんですね。
そこを残念がるコメントもお見かけして、まあその気持ちもわかるとなるわけです。
が、歌舞伎好きの方の感想を見て、今回の編成はああでなければいけなかったんだなあと納得しました。
小狐丸、小烏丸、髭切(友切)、膝丸(蜘蛛切)、みんな歌舞伎を追いかけてる方には「あの作品で登場したやつ」なんですよね。あらすじとか解説とかにも名前が上がってくるラインの刀で。
審神者が美術館にいって「ああ、あの」となっているあの感覚ですよ。
三日月はびじゅチューンとか美の壺とかで名前だけはって方もいらっしゃるだろうし、同田貫は時代劇まで見ていればというラインではありますけどもこちらも知名度がある方なわけで。
どれだけいい作品になっていたとしても、元々の歌舞伎好きの方からの票がなければ再演や第二弾・第三弾は期待できないと思うので、今回どちらのファンにとっても未知の領域へ入りやすい作品になっていたのはとてもよかったと思います。

いや、ほんと第二弾・第三弾とやっていただきたいです。
他のメディアミックスでも古典オマージュはありますが、そこを一番がっつりやれるのは本当の伝統芸能ラインなわけで。
とうらぶ側、義経公自害の短刀&弁慶の薙刀とかいますよ!
有名な武将の刀や名刀の代名詞に上げられるような刀もたくさん登場してます。
あとは村正の汚名返上シナリオとかやってほしいです。もともと妖刀伝説の流布には歌舞伎が大きく関わってるわけですし。

あと、刀剣男士に「さしたる用もなかりせば~」ってやってほしい…
だってある意味、元祖キャラ人気演出じゃないですか。

撮影OKタイム。
同田貫がにっこにこでめちゃくちゃ可愛いのです。





美味しいもの

今回、先人の方々が付近の美味しいものを紹介してくださっていたので、ありがたく活用させていただきました。

場内のアイス、一つずつはちいさめですが6種お味があるのでなかなかの量でした。
でもどれも美味しかったです。
開場前になんか列っぽくなってるかなくらいのあたりで後ろについて、そのまま入場したらスムーズに買えました。

お弁当は昼夜で見る日の夜に予約しました。
昼が終わって出てくると夜の部が列になっているという情報を見て、そこは受け取るだけにしたほうがいいかなと。
幕間の休憩では地下の食堂(場内で買ったもののみ飲食できる)が使えたので、そこでいただきました。


信玄餅アイス、そのタイミングで上の売店では見当たらなかったのだけど、下では案内が出てて、聞いたらそのときのラス1だったそうで!
黒蜜のしっかりした甘さが好きな人は好きなやつです。

駅の地下直結のところで買ったヘレカツサンド
お値段お高めかなと思ったのですが、その分美味しいやつでした。これは評判いいわけだ。

文明堂のカステラサンド(シャインマスカット)は、美味しいのだけども手がべたべたしちゃうので、ちょっと食べづらかったです。

白金やさんのおいなりは宿に戻ってからのお夜食にいただきました。
凝っていて美味しいやつでした。

場内で売っていた萬年堂さんの和菓子。
おだんごが甘さ控えめな感じで、とても好きな味。

あと、こちらは入場前に利用したのですが、月替わりで世界の朝食メニューがいただけるお店。
今月はマレーシアとのこと。
こういう異文化体験好きです。

席の話

今回、どうしても見たかったので、団体申込で一枚、ローチケの先行で一枚、松竹サイトから一枚取りました。
最初に席が判明したのがローチケ先行、2階4列中央あたりです。今回、この席が一番バランスよく見ることができる席でした。
本編中、視界の欠けは一切なし。カーテンコールタイムは前の方が前傾になってしまったのですが、それでも欠けるのは役者さんの下半身まで。
花道も、芝居が行われる前方部分はしっかりと見ることができました。
聞こえてくる音の感じも、今回の席の中で一番楽しめました。

松竹で取ったのは1階20列(最後列)、中央のブロック花道寄り。
一般的に劇場後方ほど高さの差が出て視界がよくなるので、それを期待したのですが、大外れ。
舞台を四等分して、左から二つ目の部分は一切見えませんでした。メインのシーンがかなりある場所です。
決して前の席の方のお行儀が悪かったわけではありません。背をしっかり椅子につけていてそれです。この写真も、すこし目線より上の高さで撮っちゃったかなというぐらい。
今回、ローチケ等の先行が二階および一階の両端にかたまっていたことで炎上騒動がありましたが、へたに正面の席よりも、そちらのほうが、前の人の頭が邪魔になる可能性が低く、ストーリーを追うにはいい席だったのではとすら思います。
(その位置だった方の、演者が座ってしまうと何も見えないというツイートは拝見しましたが、こちらの席は演者が高い台の上に立った場面でも全く見えない状態でしたので)

団体の席は、かなり直前に判明しました。
花外(いわゆるドブ席)の、かなり後方です。
たまたま花道隣をいただきまして、こちらは大変視界良好でございました。
あと、今回は花道を通って帰って行く場面が多いので、戻っていく姿をすぐ側で眺められるのは楽しかったです。
登場のときと比べると、戻っていくときのほうがゆっくり歩いてくださる印象ですし。

そんなわけなので、もし第二弾・第三弾があったとして、同じ劇場・先行のわりふりが同じだったら、私は迷わず先行で一枚はとります。
で、とれたのと全然違う見え方になりそうなあたりを松竹で選ぶと思います。
まあ理想は、二階を1枚と花道のそば1枚かな。