綴虚堂の日々

ヲタの日常

ミュージカル刀剣乱舞「東京心覚」

配信+豊橋での公演を3回見ました。
一回だけとれればいいと思ったら大量にとれちゃって、実はこれでも流したという…
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ぶっちゃけると、今回のお話は私の好みではないです。
私は、小説も、舞台も、映像作品も、明確な解決を求めてフィクションを見るので。
なので、例えば本は乱読しますけども、文豪作品や、文学賞を取ったような作品はほぼ読みません。そこに私の求めるものはないから。
解かれない謎が一部残るのはいいんですよ。そして解決の表現に抽象が入るのもいいんです。ただメインストーリーには解決がほしい。
興味深いという意味での面白さがある作品だとは思うんですが、見たかった方向とは違うなって。

とはいえ、見事だなと思った部分も。
今回のキャストさん、刀剣男士として通常の公演を一作品出演しきった方がいない状態ですよね。
一歩間違ったらしっちゃかめっちゃかになりそうな物語を成り立たせるだけの力量と、キャラクターとしてのふるまい。
ミュ審神者のレベリング能力(もとい、若手さんたちへの指導&演出力)ほんとにすごいと思います。


今回の物語は、ひどく抽象的で難解です。
とはいえ、予習してあれば大丈夫という類いでもありません。
予習…ミュ本丸における三日月宗近の役割がわかっていればそれでいいんじゃないかな?最短だと阿津賀志→つはものライン。
欲をいうなら三百年→葵咲も欲しいけれども。

歴史人物についても、今回は特に前提知識は期待されてないんじゃないかしら…
将門公が怨霊として知られているというくらいはあったほうがよいと想いますけども。
作中で、無名のものについて繰り返し語られましたけども、ある種歴史人物についてもこの「無名の存在」の系統なのではと思います。
名前だけは知っているかもしれないけれど、時代もばらばら。全員何をした人なのか語れるほど知っている人は多くないと思います。
舞台上で描かれるのは、それぞれの逸話を元にした物語、そして誰にも推し量ることのできないそれぞれの想い。
知られていなくても、そこにはそれぞれの物語がある。「見えないところにも月がある」のだと。
それが「誰」で「何をした」のか知っていることは物語の大筋とはあまり関係がないのだと思います。


今回の主人公は水心子。
「何か」を見たことで、ひどく混乱してしまっています。
それをあらわすように、出陣する時代も場面も次々と変わっていきます。
女性と思しき「誰か」を追い、(ディスプレイ上の)三日月と剣を交わし、歴史を巡り、何かの「答え」を得た。
けれど得られた結論は、何一つ明確には描かれない。


そしてメタ的な部分ですが、現代のこの情勢を、攻撃を受けた結果と見なして、完全でないものの対処した、だから大丈夫なんだという暗示。
そして虚空に向けたメッセージ。
ただ、正直このメッセージ性の強さが鼻につくというか、説教臭く聞こえるというか。
メインストーリーの抽象度が強いからこそ、呼びかけるメッセージがすごく強く感じてしまう。
メインの部分が明確なら、あるいはメッセージも抽象に寄っていれば、と思いました。


あと、ちょくちょくと、二回見ると印象が変わるという感想も見かけたのですけど、私はそこまで感じませんでした。
まあ、初回は「いつになったら話が展開するんだ」といらいらしていた部分は改善したけども……


ストーリー部と別の部分を言うなら、各キャラクターの表現は見事だと思います。
推しキャラがいる方々は見て損はないんじゃないかしら。
二人ずつを対比しつつ描く自己紹介ソングがどれも素敵でした。

二部のほうは、襟にうもれながらライトを振る水心子君がたいそうキュート。
腕を上げるとき、わざわざ埋もれるような方向に腕を上げてるんですよね。

繰り返しますけども、ストーリー構成は好みではありません。
でも作品としてのクオリティについては見事だと思いました。